メディアリテラシーについて
パソコンを与えられ、いろんな情報にアクセスできるようになった子供に向けて用意した文章です。
リテラシー(literacy)は、読み書きの能力を表す言葉で、「ある分野に関する知識やそれを活用する能力」のこと。
メディア(media)は、英語で「通信・伝達・表現」や「情報を伝達する手段、媒体」という意味。日本語では、文字・音声・画像・映像など、情報を伝えるすべての手段、媒体、媒介するものを総称してメディアと呼んでいます。テレビ、新聞、検索エンジン、SNS、動画サイト、ポスター、チラシといった何らかの情報を伝えるもの。
メディアリテラシーは、メディアの情報を扱う能力とでも思ってください。
情報の発信者
情報には、発信者がいます。その情報を知ってもらいたい人が、誰かに届けるためにメディアを利用しているので、そこには発信者の“気持ち”が入ります。
その情報を「こういう風にみてほしい」とか「私と同じように思ってほしい」みたいな“気持ち”は、“偏り(かたより)”となって情報のバランスを欠いてしまうことがあります。
この題材で最も際立った研究をしたのが、一九八六年に発表されたスタンレー・ロスマンとロバート・リクターによる『ザ・メディア・エリート』である。ロスマンとリクターは、二四〇人の記者ならびに主要三紙(『ニューヨーク・タイムズ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ワシントン・ポスト』)の役員、報道雑誌三誌(『タイム』『ニューズウィーク』『USニューズ&ワールド・リポート』)、そして四つのテレビ局(ABC、CBS、NBC、PBS)の報道部門に対して、聞き取り取材を行った。平均すると、これらの一流国内報道記者の八五%がリベラル派で、一九六四年、一九六八年、一九七二年、そして一九七六年の国政選挙で民主党候補に投票していたことが分かった。また、共和党に投票した国内の報道記者は六%しかいなかったとする別の調査結果もある。
上の引用文は、オニールの成長株発掘法【第4版】という本の一文です。
ここにはアメリカのテレビ局と新聞社の記者を対象に調査を行ったら、85%の人が民主党を支持していたとあります。
民主党を支持している人がテレビ番組を制作したら、民主党をよく見せようとする番組になって、敵対する共和党を悪く見せようとするでしょう。これが“偏り”です。
報道は「公平・公正」「不偏不党」「公安及び善良な風俗を害しないこと」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を守ることになっていますが、それが守られていない偏向報道はよくあります。
ちなみに、リベラルというのは「自由な」とか「自由主義」という意味で、民主党がリベラルという見方をされています。
対して、共和党は保守という見方をされています。保守は「保守主義」のことで、従来からの伝統・習慣・制度を維持する考え方です。
「何か変えよう」と「何も変えない」がぶつかり合って、バランスを取る感じですね。
※ 政治や宗教の話題はケンカになりやすいので、話題にするときは注意が必要です。
日本のメディア
続いて、日本のメディアの話です。
上の図を見ての通り、テレビ局と新聞社は資本(お金)の関係があります。こういうのは、メディアにおけるクロスオーナーシップ(相互所有)と言って、ほかの国では規制されている関係性になります。
関係競技大会の欄に、朝日新聞は夏の甲子園、毎日新聞は春のセンバツとあります。
これは夏が朝日新聞社主催・毎日新聞社後援、春が毎日新聞社主催・朝日新聞社後援で、高校野球の大会をやっているからです。新聞社が自分たちで開催し、宣伝しているイベントなので、そのイベントを悪く書くことはしません。悪い事件が起きても、あまり扱わないでしょう。
なぜなら、自分たちが不利になるので……。それが“大人の事情”というもの。
新聞社は新聞を販売してお金を稼いでいますが、大きな収入となっているのは広告です。
新聞には広告枠が用意されていて、そこには企業の広告が掲載されています。広告費用は掲載される場所や大きさによって違いますが、より多くの人が見そうな広告ほど、掲載するのにかかるお金は大きくなります。
逆に、いつも広告を載せてくれる企業は、新聞社にとっては大事なお客さんなので、その会社で悪いことがあっても、あまり悪く書きたくないのです。お金がもらえなくなったら、困るので……。そういった事情を踏まえて情報に接することで、「この情報は、こっち寄りの人が書いているな」と判断でき、自分の中でバランスがとれるようになります。
ちなみに、プロ野球の球団に「ヤクルト」や「楽天」といった企業の名前が入っていますが、これも企業宣伝の一つ。プロスポーツ選手のユニフォームも広告枠なので、いろんな企業のロゴが入っています。
要は、多くの人の目につく場所というのは、格好の宣伝場所なので、何かを宣伝したい人に「お金で売れる」のです。逆に、見る人が少ないなら、広告価値は低いことになります。
テレビや新聞も「多くの人が見る」ことを目的にしているので「見ないと大変なことに!」と大げさに言うことはあっても、「今日は何もなかったので、見なくて大丈夫です」とは言いません。そういう商売なので。
ネットで何かの情報に接する場合も、発信者のお金関係をチェックすることで、「そっち系の人ね」となって、情報がわかりやすくなることもあるでしょう。
また、その記事を書いている人の名前がわかるときは、その名前で検索したときにサジェストに出てくる単語で、どんな人なのか把握できることもあります。ロクでもない人は、悪い意味合いの単語が出てくることが多いので。
以上が情報の接し方の基本。メディアリテラシーの第一歩です。